■一人でやって(16×30)
「早く、やってみせてくれ」
「…マジで?」一応聞いてみたものの、目の前のサスケの顔は真剣そのものだ。
いや、サスケはいつだって真剣だ。
しかし今日に限ってはその真剣さが恨めしい。はたけカカシ・30年来のピンチだ。「でも、そんなもん見たって…」
「…あんた、何でも言うこと聞いてくれるっていうのは、嘘だったのか?」サスケが少し悲しそうな顔で言う。
お、お前さぁ〜〜……
分かってそんな顔してるんじゃないんだろうけど、汚いよ!「そういうわけじゃないけど…」
「あんたが、帰って来たら何だってしてくれるっていうから、オレはあんな女と」夫婦の真似事なんかして来たんだぞ!
うぅ、それを言われると弱い。サスケは昨日、半月かかった任務から帰ってきた。
それは、何もSランクではなくて、今はもう立派に上忍になったサスケが
受けるような内容ではなかったのだが
先方の強い要望があったのだ。
それは、どこぞの国の姫さんと夫婦の真似事をするというものだった。
サスケの身分を偽って、一芝居打つという内容だったらしいが、
珍しくサスケが嫌がった。そんなこと今まで一度もなかったのに。
理由は、姫さんと真似事だけでなく房事を行わなければならないから、
というものだった。それが依頼要項にきちんと記載されていたらしい。
早い話が姫さんはサスケに惚れていたのだ。それで、これを機に既成事実を作り
あわよくば依頼してできたその既成事実を盾に、
本当に結婚に持ち込もうと目論んだというところだ。
サスケが嫌がったのはオレがいるからだ。生来の潔癖性なのか、
まぁサスケの性格を考えると分からんでもないが、恋人がいるのに
他の人間とセックスなどとんでもない、ということらしい。
ただ、そうは言ってもくのいちを始めそれは忍の仕事のひとつであるので、
渋々ながらもサスケは始め引き受けようとしていた。
ところが、こと結婚に関する先方の目論見がサスケにバレてしまって
サスケは「絶対に受けない!」と意固地になってしまったのだ。
まだこの辺は16の子供だ。で、オレは五代目に呼び出され『お前のせいなんだから何とかしろ』と凄まれ
(なんでオレのせいなのよ)仕方なく『結婚なんか断って逃げ帰ればいいんだから』と
サスケを必死で説得した。
それでもまだサスケが渋っているので、
『帰ってきたら何でも言うこと聞いてやるから』
と、自分でもどこから出したんだ、というような甘い声でサスケに囁いてやった。
それで、ようやくサスケはその任務を受ける気になり、
昨日やっと帰還したわけだが…「早く」
「え、いや、でも…」だからって、そんな!!
オレは叫びだしたい。コイツは何を要求するかと思いきや、
オレに「自慰してるとこを見せてくれ」などと言い出しやがった。
おっお前!
半月振りに会った恋人に言う言葉がそれかよ!「…やっぱり、嘘だったんだな」
「え?」
「あんたは、オレを行かせられたら良かったんだ。どうせ、本気で
言ったわけじゃなかったんだな」分かった。と、サスケは滅多に見せない意気消沈した顔でベッドを降りた。
そうして、足下に落ちている上着を引っ掛ける。
えっえっ、嘘、帰っちゃうの?
えっやだよ、帰るなよ、せっかく半月振りに会ったのに。「サスケ!」
「…なんだ」
「分かった、分かったから」
「…。してくれるのか?」
「するから…」帰るな、と言いかけてオレは目がテンになった。
サスケはさっきの表情はどこへやら、満面の笑みで笑ってやがる。
騙された!「じゃあ、ほら、早くして見せて…」
サスケはオレの耳元で格好良い声で囁いてきた。
オレは相変わらず男前な目の前の変態を恨めしそうに見て、覚悟を決めるのだった。
◇
「…っ、……」
「…カカシ、声」出すか!
オレは怒鳴る代わりにサスケを睨んで荒い息をついた。
一人でやってる時に声出すやつなんていないだろ、AVの見過ぎだ!
それとも何だ、終わった途端に『ふぅ〜』とか言ってやろうか、コンチクショウ。「…まぁいいか」
「………」オレはできるだけサスケを見ないようにしながら、自分を追い込むことに専念した。
でもサスケがものすごい気合いの入った視線をオレの股間と顔に送ってくるので、
やりにくいことこの上ない。「カカシ、」
「あっ」思わず変な声が出てしまった。ていうか、サスケ、何すんのよ!
サスケはいきなりオレの足首を掴むと、ガバリと左右に割り広げ、
更にオレの身体を後ろに倒して来やがった。
何すんだ!なんだこの恥ずかしい格好は!「こっちは」
「うっ」オレが事態を把握する間もなくサスケの指がオレの後ろを滑る。
そうして、いつもサスケを受け入れているオレのそこを、何度もなぞった。「やめ、…」
「こっちはしなくていいのかよ」バカタレ!!
オレは今度こそ怒鳴ってやろうかと思った。
このアホ、オレは男だぞ!
そこは相手がお前だから使用するだけであって、
一人でやる時にそんな刺激なんかいるわけないだろ!…と言いたかったが、もうちょっとで達けそうだったオレにそんな余裕はなかった。
こんなとこで止めやがって、お前、わざとか。「…そんなとこ、一人でやる時に、いるわけない、でしょ…」
「欲しくならねぇのか?」お前なー。
お前の語録を普通に集めたら、
『イチャイチャパラダイス』の続きが一冊出るんじゃないか?「…なら、ない…」
「…でもカカシ、いっつもこうすると気持ち良さそうにすんだろ」
「やめっ、…あっ…」いきなりサスケの指が潜り込んで来て、その刺激でオレはいきなり達ってしまった。
ていうかお前、いつの間にジェルなんか用意してたんだ。「やっぱり。挿れた途端に達ってんじゃねぇか」
「違う、今のはお前がいきな…り…って、あ、待て、ま…」それからサスケは好き放題に指を動かし出して、そうして指を抜くと、
自分もオレの中に入ろうと腰を寄せて来た。
あれ、お前、それ…「途中から、っていうかだいぶ前から我慢してたんだ」
バツの悪そうな顔でサスケが言う。
おっ、その顔はちょっと可愛いな。「姫さんとやる時も、一生懸命あんたとのこと思い出してやってたんだぜ」
ええっ、お前それは、失礼な奴だな。
そうは思うものの緩んでくる頬が自分でも自覚できる。
「ん、やっぱ、サスケと抱き合うのが一番いいよ」
「オレも、あんたじゃないとイヤだ」サスケはオレの中に完全に入りきって息をつくと、ぎゅうぎゅうとオレを抱き締めてきた。
オレも、小さく笑いながらサスケの頭を撫でる。
あーやっぱ、好きだなー。サスケが一番男前だ。「でも一人でやってもらうのも、色っぽくていいな」
「…それはどうも」
「だからさ、後で…」
「え?」これ、と言ってサスケは袋から何やら取り出した。
えっ、なんだそれは。
なんだそのグロテスクなピンクの張り型は。「土産に買って来た」
「はぁ!?」そんな土産持って帰れ!っていうか、どこで買ったんだ、そんなの!
大体土産って言ったら地域の品という意味だろ、何の土産なんだ、それは。「だから、後でこれ使ってもう一回、一人で…」
「なっ、ふざけんな、おまっ…」
「な?」な、じゃない!
でもサスケは、オレの腰ごと溶ろかすようなキスを仕掛けてきた。
あ、きもちいい…
こんなキスを、任務中姫さんにもしてたんだろうか。
それは、ちょっと、悔しいな…そのままサスケが腰を動かして来たので、オレはだんだんと訳が分からなくなった。
もしかしたらよく分からないままに、この後あの妙な張り型を突っ込まれて
やらされるのかもしれない。でも、まぁ、いいか…もう何でも…
「カカシ…」
「ん」ホントは、オレだってあんな任務行かせたくなかったんだ。
だから、オレにだって何か褒美に言うこと聞いてもらってもいいぐらいなのにさ。
まぁサスケは、普段から何でも聞いてくれるけどさ、…ゆるゆると目の前の少し湿った黒髪を梳いて、オレはサスケの肩を舐めた。
ピクッと動いたサスケが顔を上げて、ちょっと笑ってオレの鼻にキスをした。オレは、隣に転がっているピンクの物体をできるだけ見ないようにしながら、サスケの口に口付けた。
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end