常識しらずと恥しらず
「なぁに?」
カカシの首元を見遣ったまま動かないオレにじれて、もう一度カカシが声を掛ける。
「いや、何でもない」
オレはカカシの首元の痕をぺろりと舐めて、カカシのアンダーシャツを捲り上げた。
カカシは嫌がらない。
カカシは少し赤くなった頬をじっとうつむかせて、時折オレの手に反応するようにちいさく震える。ここは、アカデミーの職員室で、更に今オレがカカシを押し付けているのは、イルカ先生の机だ。
相変わらず進んで残業を買って出ているらしいあの人は、
もう夜の8時だというのに5分前までここで書類をまとめていた。
彼が帰ってしまって、人気のなくなったアカデミーの職員室は昼間の喧噪が嘘のようにしんとしている。
オレもこんなアカデミーの雰囲気は初めてだ。「っ、あっ、…」
「なに、気持ちいい?」
カカシは嫉妬しているのだ。先ほどオレが残業中のイルカ先生と話していたのもたまたまなら
(単に任務報告書類の記入漏れ箇所を渡しに来ただけだ)、
それをカカシが目撃したのもたまたまだった。
丁度いいから一緒に帰ろう、と声をかけて、すぐにカカシの態度がおかしいのに気が付いた。「なんで、オレのことは呼び捨てのくせにイルカ先生は『先生』なのよ」
「あんたはオレの上司であって先生じゃなかっただろ」
「でもナルトもサクラもオレのこと先生って」
「あいつらがちゃんと認識できていなかっただけのことだ」帰ろうぜ、そう言って肩を返したのに、カカシはじっと机の上を見つめて立ち止まっている。
なんだ、と思ったらイルカ先生の机だった。
あんた、普段は嫉妬なんかまるでしないくせに。
そりゃオレに嫉妬してんのか『教師』としての嫉妬なのかどっちなんだ。「…何だ、そんなに気にすんなら今度から『先生』って呼んでやろうか?」
「オレが言ったせいで呼ばれたって、そんなの意味ないよ」
大体もう、お前オレの受け持ちの下忍じゃないし。同僚の上忍だし。
拗ねたような声が返ってきた。オレは少し嬉しくなって、後ろから軽く抱き締めてみる。
カカシは抵抗しない。そっと形のいい唇を覆っている口布を下ろしてみる。抵抗しない。
なるほど……「なぁ、」
オレはさ。熱い息と一緒にカカシの耳に吹き込んでやった。
露わになっているカカシの耳じりが赤く染まって、カカシはますますうつむいた。かわいい。「イルカ先生見たってこんなことにはならないぜ」
下半身を押し付けてやった。やっぱり、抵抗しない。
いつもだったらギャーギャー暴れるくせに、アカデミーでなんて、
しかもイルカ先生の机の上なんて言語道断のくせに。ぎゅうっと抱き締めてアンダーの上から乳首をつねり上げる。
カカシが短く息を飲んで、上体を机の上に預けた。イルカ先生の机の上に。「それにさ、オレは」
今度は反対の手でカカシの太股を撫でてみる。ここまで来ても、カカシは抵抗しない。
おい、いいんだな、最後までやるぞ。
オレは今さらカカシに抵抗されることのないように、念を入れてカカシの弱い掠れた声を出した。
それから、もっと強くカカシを抱き締める。カカシは、オレの腕の中でじっと震えている。「オレは、あんたがホントに『先生』じゃなくて良かったって思う、
他のガキ共に懐かれてるアンタ見て、その度に嫉妬するのなんてごめんだからな」まぁ半分本音だ。カカシは、オレのこの言葉を聞いてやっとこわばった顔を解いてへにょっと笑った。
相変わらず気の抜ける笑い方だ。かわいいな。「…サスケってば、嫉妬深いなぁ」
「放っとけ」どっちがだよ。まぁ今日は特別なんだろうけどな。
オレはカカシに頬を擦り付けて、それから軽くキスをした。
カカシはさっきより少し落ち着いた顔で、でも嬉しそうにくすぐったそうに肩をすくめた。オレは、心の中でイルカ先生に「ごめん」と謝りながら、本格的にカカシを貪ることにするのだった。