| 2005/03/07 ■ 守ってあげる(サスカカ・12×26) |
| 「カカシ先生!おっそいってばよォ!」 「そうよ先生!何時間待たせたら気が済むのよォ」 「………」 カカシは今日も遅れてきた。そのことに、ナルトのウスラトンカチとサクラが 食ってかかっている。まぁ、いつものことだ。 「悪いな〜…今日は来る途中でケガをして死にかけだった猫を助けてな」 「「ハイ、嘘!!」」 カカシはまた聞かないほうがマシなような言い訳をして笑ってやがる。 オレは、少しカカシの側へと寄った。 「ん?な〜んだ、サスケ?」 「………」 ボーッと笑うふうに見せながら、カカシはさり気なく自分とオレの距離を測って 身体をずらす。 フン、まぁいい。 「……カカシの遅刻なんかいつものことなんだから、放っておけ。 それよりさっさと済ませて帰るぞ」 「そのいっつもが困るんじゃねぇかってばよ」 「…今は来てるんだから、いいだろ。こいつに文句言ってもムダだぜ」 オレは呆れたようなフリでカカシを見てやった。あいつは、相変わらず 何考えてんのか分からないような顔でぼーっと笑ってやがる。 可愛いな。 …じゃなくて。 「そうね、サスケ君もこう言ってることだし、さっさとやっちゃいましょ!」 「サクラちゃんが言うなら…でも川の空き缶拾いなんかやる気出ねーってばよ」 「ハイハイ、ナルト、文句言わな〜いの」 「じゃあやるか」 そうだ、今は来てるんだからそれでいいだろう。 オレは、先ほどカカシの側で感じた血の匂いを思い出しながら 自分に言い聞かせた。 ったく、人殺してからここに来たくせに、 『死にかけの猫を助けた』なんてよく言うぜ。 …でも、たぶん今日だってロクに寝てないんだろう。 「じゃ、始め〜。オレはあそこでカントクしてるからヨロシクね」 「せんせ、ずっけぇってばよ!どーせまたやらしい本読んでんだろ」 「ハハハ〜。ナルトも大人になったら分かるよ〜」 「んなもん分かりたくねぇってば!」 まだぶちぶちと言いながらナルトは空き缶拾いを始めた。 そうだ、お前だってやらないよりは足しになるんだからさっさと始めやがれ。 オレは適当に缶を拾い上げながら、 木の下でいつもの怪しげな本を読み出したカカシを見た。 …そうだ、大人になったら分かるんだろう、あのナルトのウスラトンカチだって。 カカシが遅刻するのは大抵夜間の暗殺任務で疲弊しているか、 もしくはケガを負ったからだということや あの怪しげな本の表紙の下は、今夜のSランク任務に関する詳細資料に すり替えられていることなんかに。 「じゃ、休憩〜」 「やったってばよ!」 カカシがボケッとした声で号令を出して、オレ達は昼飯の休憩を取った。 オレは、変わらず本を広げているカカシの側に寄る。 「ん?どしたの、サスケ」 「あんた、メシは」 見たところ、カカシは何の用意もしていない。 任務から直行でそんなヒマがなかったのかと思いきや、 「あー…オレ、ちょっと朝食い過ぎたんだよね〜」 何でもなさそうにカカシが言った。 てめぇ、オレとナルトを同列に見てんじゃねぇ… 「………。メシが食えないほどひどい怪我をしたのか」 「え………」 カカシはビックリした、みたいな目でオレを見やがった。 なめてんなよ。だてにあんたに片思いはしていない。 「…まいったなぁ〜」 カカシはあらぬ方向を見遣ってポリポリと頭を掻く。 オレは、じっと言葉の続きを待っている。 「…そんなひどい怪我じゃないよ、ただちょっと今きっつい薬飲んでるからさ、 物食えないだけ」 何でもなさそうに言うカカシにオレは胸が痛くなった。 これがカカシの日常。 里一番の、誰にも劣らぬ腕を持つ忍の日常。 「…そうか、身体は大丈夫なんだな」 「大丈夫だよ。…サスケってば油断できないなぁ」 相変わらず茶化した口調で言うカカシに、オレは構わず 「身体に気を付けろ」 と真面目な口調で言った。 カカシは、さっきよりビックリした顔をしている。 なんだ、オレなんか変なこと言ったか? 「…ビックリした〜」 「…なんだ」 「いや、オレに向かって『身体に気を付けろ』なんて 誰も言わないからさ〜」 自分で言った言葉の意味にも気付いていなさそうなカカシに、オレはまた 胸が痛くなる。 里一番の忍に身体に気を付けろなどと誰も言わない。 カカシも言われなくて当たり前だと思っている、 カカシはいつでも庇護する者だ。 「そうか」 「何だ?」 オレは、この気持ちをどうしていいのか分からなくなって、 ポンポンとカカシの頭を撫でた。 カカシは、よく分からないような顔でボケーと笑いながら、 オレの手をさせるに任せている。 「オレが、もうあと5年ほどもして」 「うん?」 「あんたを追い越すぐらいの忍になったら、毎日言ってやる」 その時に言う「身体に気を付けろ」は、 もうちょっとぐらい真実味を持って届くだろう。 できたらベッドの中あたりで言えるように、これから頑張らなければならないが。 「うわ〜お前、生意気〜」 「フン」 嫌そうな声をしてみせるくせに、その顔は随分嬉しそうだ。 まぁ任せておけ、『好きな女は身体を張って守れ』というのは うちは家の家訓なんだ。 イタチが言っていたことだから少し怪しい気がしないでもないが。 ついでにカカシは男だが。 まぁそれはオレが成長しさえすれば、どうにでもなるだろう。 いや、してみせる。 「カカシ先生、何してんだってばよ」 「ん?なんでもないよ〜」 「なぁなぁ、やっぱオレにもカカシせんせのその本見して」 もうメシを食い終わったらしいナルトがオレ達の側へやって来て、 (クソッなんで邪魔しやがるんだ!ホントにウスラトンカチだな!) カカシの怪しげな表紙の本に手を伸ばした。 「だ〜め!これはお前にはまだ早いよ」 「ちぇっ、ちょっとぐらいいいじゃねーかってばよ!先生のケチ」 ナルトが、実は任務詳細資料だろうあの本に手を伸ばして、 カカシにはたかれている。 そうだ、オレ達にはまだ早い。 でも、できるだけ早くそこへいってやる。 そうして、オレはあんたを守ってやる、せめて昼飯ぐらい一緒に食べれるように。 オレは、少し名残惜しく感じながらカカシの髪から手を離した。 |